Perinatal Pediatric Space Medicine association (PPSM)

【Woman in Space】女性の宇宙進出!〜生理・妊娠・子育て〜

宇宙医学学会

女性と宇宙

2021年, 日本では13年ぶりに宇宙飛行士の募集が始まりました.
そして, 12月8日には民間人の前澤友作さんが搭乗した商業宇宙船が打ち上げられました.

これまで限られた人だけが行く場所だった宇宙は全ての人がいける場所に変わりつつあります.

それはもちろん女性, 女の子にとっても同じです.
これまで宇宙に関する事業は男性中心でしたが, その流れは変わりつつあります.
宇宙に進出する女性は今後, どんどん増えていく傾向にあります.

女性の宇宙飛行士が増え, その女性宇宙飛行士に憧れて, 将来の夢に宇宙飛行士を掲げる女の子や女性が今後増えていくかもしれません.

そこで今回は【女性と宇宙】というテーマで

  • 宇宙で働く女性
  • 生理, 妊娠と宇宙
  • 子育て中の女性宇宙飛行士に関する映画

についてご紹介したいと思います.

女性と宇宙産業の現在-女性は5人に1人だけ

国連が発表した数字によると全世界でトータルしても, 宇宙産業に雇用されている女性の数は【わすか20%】です. しかも, この数字は30年前とほぼ同じです.

特に宇宙飛行士に限定すると【女性は11%】のみです.

これまで560人以上が宇宙を旅しましたが, そのうち女性は70人未満で, 225回の船外活動のうち女性によるものはたった15回(約6%)のみでした.
ジェンダー(性別)の不平等は, 先進国でも発展途上国でも広がっています. 科学, 技術, 工学, 数学(STEM)の分野の教育とキャリアにおいてはその傾向が特に強いのが現状です.

宇宙は急成長している分野であり, 比較的高収入の仕事を提供する傾向があります.
それはつまり女性が宇宙の分野で働くことで, 経済的な自由を手に入れたり, その能力を発揮することにつながります.
【女性であるあなた】が宇宙で働くことは,

  • あなた自身があなたの能力・スキルを強化すること
  • 宇宙分野での男女平等を促進すること
  • 世界中の若い女性と女の子に夢と希望を与えること

になります.

当然, 国連も宇宙産業において, 女性が積極的かつ平等な役割を果たすことを目指しています

実際, 2021年の世界宇宙週間のテーマは【Women in Space】でした.

性別の偏りをより意識し, 宇宙関連の事業において女性が直面している障害を特定し, 男女の格差の解消に関する議論が行われました.

さらに国際宇宙局(UNOOSA)は女性のエンパワーメントを促進するために
Space for Womenを立ち上げ, 航空宇宙分野の女性の役割の意識を高めて, 女性の参加を強化するよう促進する活動をおこなっています.

つまり, これからの宇宙事業において女性の役割は間違いなく増えます.
それはつまり, 女性であることが宇宙にいくチャンスを増やすことを意味します.

女性の宇宙での生活-生理・妊娠

実際に宇宙で生活するには女性が直面問題はなんでしょうか?
宇宙に滞在したNASAの女性宇宙飛行士の体験談や研究データを参考にまとめます.

女は行きで, 男は帰りに気分が悪くなる!?

一般的に女性は宇宙へ行く時, 男性は地球に帰還するときに気分が悪くなる傾向があると言われています.
また地球帰還時, 女性は視覚や聴覚の影響が男性より出にくいですが, 血圧の調整がしづらくめまいの症状が出やすいと言われています.

宇宙で生理になったらどうするの?

女性特有の【生理】について宇宙ではどう対処するのでしょうか?

  • 避妊ピルを服用して宇宙滞在中の生理を止める方法
  • 生理は止めずナプキンやタンポンで対応する方法

があり, その選択は個人に委ねられています.
実際には宇宙飛行士は分単位で業務を課されているため, NASAの女性飛行士のほとんどは避妊ピルを服用して生理を止めています.
経口避妊薬は地球上では静脈血栓塞栓症のリスクを増加させることで知られますが, 最近の大規模な調査で, 宇宙飛行中の経口避妊薬の使用は静脈血栓塞栓症のリスクを増加させないことが明らかになりました. 宇宙飛行士が宇宙空間で運動を継続的に行なっていることも静脈血栓症のリスクを下げることにつながっていると考えられています.
現在は経口避妊薬以外にも, 子宮内避妊用具など生理を止める他の方法も調査されているようです.

宇宙ステーションではトイレで尿からの水のリサイクルを行っていることは有名です.  生理中のトイレが心配になるかもしれませんが, 分離フィルターの働きで生理の影響が出ないようになっています. 宇宙飛行士山崎直子さんもトイレのフィルターのことについて話されていました.

宇宙と妊娠

宇宙生活での放射線が生殖能力におよぼす影響についてはどうなのでしょうか?
現時点では女性の生殖機能への影響は明らかになっていません.
男性については宇宙滞在中に精子の数や質が下がり, 帰還後に回復することが分かっています. 長期的なダメージについてはまだはっきりわかっていません.

しかし実際には宇宙ミッションの後に子供を設けている飛行士は男性も女性も多くいます.

一方で、女性宇宙飛行士の最初のミッション時の平均年齢は38歳です.
NASAでは宇宙ミッション前に女性宇宙飛行士が卵子を凍結保存することに協力的で, 彼女たちは宇宙飛行専門医と話し合いを含めさまざまなサポートを受けられるようになっています.

今後は女性宇宙飛行士が世界中でこれまで以上に採用され, 宇宙での生物医学研究の対象が男性から女性へと幅広く行われるようになり, 人間の身体と宇宙の関係性についての理解に貢献されると想定されます. バースコントロールや仕事・育児の両立を含めた女性宇宙飛行士のサポートの充実が期待されます.

女性宇宙飛行士と家族-映画「約束の宇宙(そら)」

欧州宇宙機関(ESA)はJAXAと同時期に宇宙飛行士の募集を開始し, 女性宇宙飛行士は全体の募集人数の半分を占める採用数を予定しています.
このESAの協力のもと女性宇宙飛行士と家族の物語を描く映画があります.(ドイツ・ロシア・カザフスタンのなどの施設の協力のもと撮影が行われています.)

映画【約束の宇宙(そら)】は, フランス人宇宙飛行士でシングルマザーの母と8歳の娘のロケット打ち上げまでの日々が描かれた作品です. 主人公は宇宙飛行士の仕事への情熱と娘への愛の間で葛藤を抱えながらも, 宇宙飛行士としても母親としても成長していきます. 音楽は日本人の坂本龍一さんが担当されており, 美しいメロディーが親子の心情と共に心に響きます,
ぜひご鑑賞いただきたいと思います.

約束の宇宙の予告編はこちら